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【書評】『読みたいことを、書けばいい。』ブロガーこそ読むべき一冊

この本は、タイトルの通り、「読みたいことを、書けばいい。」と著者、田中泰延(ひろのぶ)さんが、至って真面目に、でも時に面白おかしく書いている一冊です。

正直、あっという間に読み終わります。

この本に興味がある人はきっと、「書く」ということを仕事にしたいと考えていたりとか、書きたいことはあるけどうまく伝えられない、とか、上手に文章が書ける方法が知りたい、とかそんなことを考えていると思います。

私もそうでした。

ブログを書いたり、メディアのライターとして書くとくことが増えてきて、自分の書きたいことを書くということと、情報を届けるということのギャップで悩んだり、立ち止まりそうになっていた時に、この本に出会いました。

本書にも何度も書かれているように、この本は世間によくあるような、文章をうまく書くためのテクニック本ではありません。

でも、至ってシンプルで、読んでいてクスっと笑えるような楽しさがあって、読み終わった時には心が軽く、ワクワクして、「書きたい!」と思えるような一冊でした。

「読者」を意識しすぎるせいで、なかなか書き進まないことはないですか?まずは、最初の読者である自分が読みたいものを書くという、大切な視点に気づかせてくれます。

本書は、5W1Hの原則に基づいて書かれています。

  • 第1章 なにを書くのか=WHAT
  • 第2章 だれに書くのか=WHO
  • 第3章 どう書くのか=HOW
  • 第4章 なぜ書くのか=WHY

ちなみに、WHENとWHEREに関しては、単純明快。「いま、そこで」書くのです。

章ごとに、私が好きだった言葉をまとめていきます。私自身の、自分が読みたくなる文章を書いていきますよ!

読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術 [ 田中 泰延 ]
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序章 なんのために書いたか

本書は、田中さんが電通のコピーライターをやめ、「青年失業家」を名乗って様々なwebサイトに寄稿しているタイミングで、ダイヤモンド社の今野さんから以上な熱量のメールが届いたことにより生まれた一冊です。

今野さんから田中さんへ送られたメールにドキッとしたので、一部抜粋させてください。

「文章が伝わらない」と悩む人は、今、とても多いです。その大きな原因の1つは、「書き手が嘘をついていること」にあるのではないかと、最近感じ始めています。私が考える「嘘」とは、あからさまに悪意のあるものだけでなく、「本当に思っていないことを書く」「他人から借りてきた言葉をそのまま使う」「その対象に愛がないのに紹介する」などを含みます。

書くことに憧れ、ブロガーやライターを目指す道のりの中で、このような悩みを抱える人はたくさんいるのではないでしょうか。自分のことも見透かされているようで、私まで今野さんが少し怖くなりました。

この本は、「書く」ということに対してのスタート地点の考え方について書かれている一冊です。有名になりたい、お金が欲しい、そのノウハウが知りたい、というだけの方には向いていないかもしれません。

書くこと本来の楽しさ思い出すために、リラックスして読むのがおすすめです。

第1章 なにを書くのか

なにを書くのか。それを知るためにはまず、「文書」と「文章」の違いを知っておくことが必要だと本書では書かれています。

「文書」というのは、レポートや論文、メールなど、問題解決や目的達成のために書かれているもので、世に出回っている「文章術」の本は実はこちらにあたります。

一方「文章」は、書きたい人がいて、読みたい人がいる(かもしれない)ものなのです。

だからこそ、文章を書くには自分が読みたくなければいけない。

そして、書きたい人がいて、読む人がいる文章のボリュームゾーンは「随筆」だといいます。

「随筆」とは、「事象と心象が交わるところに生まれる文章」であると田中さんは定義しています。

事象とはすなわち、見聞きしたことや、知ったことだ。世の中のあらゆるモノ、コト、ヒトは「事象」である。それに触れて心が動き、書きたくなる気持ちが生まれる。それが「心象」である。

自分の書いている文章はどの分野なのか、それをきちんと理解して書くということの大切さを、恥ずかしながら初めて知るきっかけとなりました。

事象を中心とした文章が「報道」や「ルポルタージュ」であり、心象を中心とした文章が「創作」や「フィクション」と呼ばれるんですね。

定義をしっかりっとすることで、自分がいま書いている文章はなんなのか、迷子にならずにすむわけです。

第2章 だれに書くのか

この文章はだれに届けるのか、「ターゲットを想定しよう」というのは、耳にタコができるほどみなさんも聞いてる話だと思います。

でも田中さん曰く、「ターゲットなど想定しなくていい」のだそうです。強い…。

本やインターネット、文章で溢れる世界で、文章は人に届けられるのではなく、ただ「置かれる」のです。

だからこそ、その文章を最初に読むのは間違いなく自分であり、自分で読んでいて面白くなければ、書くこと自体が無駄になってしまいます。

そしてさらに、「自分が書いておもしおい文章」とは、「まだだれも読んでいない文章を自分で作る」ということだと述べられています。

すでにある文章なら、自分で書く意味はなく、読み手でいればいいんですね。そう考えると、なんだか少し肩の荷が下りたような気になるから不思議です。

あともう1つ、好きだったのが「他人の人生を生きてはいけない。」という考え方。

書いた文章を読んで喜ぶのは、まず自分自身であるというのがこの本の趣旨だ。満足かどうか、楽しいかどうかは自分が決めればいい。しかし、評価は他人が決める。他人がどう思うかは、あなたが決められることではない。

この考え方、私はとても好き。2回も言ってしましいました。

「書く」ということとで自分の人生を生きる、生きたい。書くことは、自分の人生を生きるための手段なんですね。

第3章 どう書くのか

物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛

この言葉、ずしんときました。

ライターという職業で生きていこうと考えるならば、ライターの考えなど全体の1%以下でいいわけだし、その1%を伝えるために、残りの99%が必要、と。

じゃあこの書評はなんなのだろう、と今すこし筆に悩みながら書いております。

文章は自分を表現する場だ、という考え方は、ライターにとっては無用で、ライターはあくまで、読者を主役にしないといけない。調べた上で、あなたはどう思う?という問いかけをするのがライターの仕事なのだな、と改めて感じました。

そのためにも、「書く」上では一次資料にあたる必要があるのです。

この言葉も好きでした。

言葉とは、文字通り「葉」である。好きなことを好きに書いた葉を繁らせるためには、「根」が生えていなければならない。それが一次資料である。

一次資料にあたるって、かなり労力がかかるし、正直言って大変なこと。でも、そこの根幹こそがやっぱり葉を繁らせるためには大事なことなんですよね。

調べることは、愛することだ。自分の感動を探り、根拠を明らかにし、感動に根を張り、枝を生やすために、調べる。

愛と敬意。これが文章の中心にあれば、あなたが書くものには意味がある。

素敵な言葉。

愛と敬意。私は文章を書くときに、果たして愛と敬意を私は持つことができているのか。

愛情がなければ敬意をもって、丁寧に書くことはできない。今一度、自分が書いている文章、書いている内容に対しての愛はあるのか考えてみるキッカケをくれました。

第4章 なぜ書くのか

書くことは生き方の問題である

私は書くことが好きだと感じていたけれど、どうやらそれはとっても奇妙な人の部類に入るらしいというのをしりました。たしかに、書くことは人間最後の職業かもしれない。死刑囚だって原稿を書いて本を出せますもんね。

でも、田中さんのこの言葉に救われた気がします。

自分が読みたくて、自分のために調べる。それを書き記すことが人生をおもしろくしてくれるし、自分の思い込みから解放してくれる。何も知らずに生まれてきた中で、わかる、学ぶということ以上の幸せなんてないと、わたしは思う。

だからこそ、自分の読みたいことを書くことが幸せなんだな、と。

まとめ

『読みたいことを、書けばいい。』、、、?

なんてふざけたタイトルなんだと思って、そんなことできたら苦労しないよ!と思って、正直一度購入するのを躊躇いました。

でもなんだか心に引っかかって、「えいっ!買ってみるか!」という思いで購入。

読んでみると、少しふざけた田中さんというおじさんが、真剣さとふざけた感じ半々くらい(それは言い過ぎかも)で「書く」ということについて素敵に書いている一冊でした。

これは、田中さん自分が楽しみながら書いているんだろうな、って。

冒頭の一言目「あなたはゴリラですか」ですからね。

書くことに対して、行き詰まっていると感じている方こそ、今すぐ読んでほしい一冊です。

読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術 [ 田中 泰延 ]
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