最近電子国家として日本でも話題になっているバルト三国のエストニア。
エストニアに行った際に、エストニア大使館で働く日本人の方にお話を聞く機会があり、旅行に行っただけではわからないエストニアのリアルな話を聞くことができました。
今回は、お話を伺った際に聞いた大使館での仕事、エストニアで働いているからこそ感じる日本の問題点、なぜデジタル国家になったのか、などなど、エストニアについての歴史、現在、これからをまとめます。
目次
大使館での仕事
エストニア大使館での仕事は主に2点で、エストニアの企業紹介をすることと、大使の補佐。
最近では、電子国家として有名なエストニアの企業を国外から訪問しにくる人がかなり増えているそうで、彼らとの関係を築くことも重要な仕事だそうです。また、日本からも複数の企業が訪れているのだとか。
大使の補佐としては、相手国について徹底的に情報収集をしてサポートする仕事が主な仕事。
お話を伺った方は特にIT系の企業の担当をしている方なのですが、大使館の人の中でITに詳しい人がいなかったため、ITの担当に半強制的になったと言っていました。
そういうなんでもやってみよう精神も、エストニアの大使館でガツガツ働いていらっしゃる日本人の方のパワーだな、と感じさせられます。
エストニアで働いてみて日本に対して感じること
印象的だったのが、「日本はやらなくてもいい無駄なことをしすぎだ!」というお話です。
例えば、日本では当たり前になってしまっていることですが、パスポートを取るにも、住民票を移すにも、何かにつけて市役所に行ったり、サインするためだけに外務省に行ったりなど、何かにつけて規則として行われている無駄なことが多いですよね。
日本では総務省と外務省のコラボもあるらしいのですが、なかなか進んでおらず、総務省がもっとエストニア国家の仕組みを学ぶべきだとおっしゃっていました。
私は知らなかったのですが、マイナンバーなど、エストニアのような仕組みを真似しようと試みては失敗している国はいくつもあるらしいです。
特に日本では住所の変更を役所でしなくてはいけないことも、マイナンバーの浸透を遅らせている要因なのだとか。また、個人に数字を当てられることに恐怖心を抱く日本人が多すぎるともおっしゃっていました。
もっと効率を求めてスマートな国になるためにはマイナンバーのような制度は必要だと思う反面、やはり新しい仕組みや技術を怖いという気持ちもわかります。そういった面が、エストニアよりも人口も企業も多い日本だと統率するのが難しいのだろうな、と。
エストニアは、民間の企業も政府が保持している個人のデータと関連させて事業を進めているらしいのですが、日本はそういうことを政府しかやろうとしない。
また、省庁だけじゃなくて、大企業や民間企業が多すぎてデジタル化がうまく進まないという説もあるとおっしゃっていました。
こうして海外にいるからこそ日本のいいところや悪いところって、すごく価値のある意見だな、と思いました。
エストニア国家としてのデジタル化
最近ブロックチェーンなどの話題から、日本でもデジタル国家エストニアなどととりあげられていることが多いエストニア。
なぜエストニアでデジタル化が進んだのか、その理由を聞きました。
まず、エストニアがロシアから独立した際に、資源もなく、お金もなく、人口が少ない割に国土が大きいという特徴を抱えていた点。
また、政治家の気持ちとしてソ連と真逆の新しいことやりたいという気持ちが大きかった点。
近くの国で、フィンランドやスウェーデンというロールモデルがいたという点。
以上の3点がエストニアをデジタル国家にしたとおっしゃっていました。
通信網としてはソ連崩壊の前から、ベンチャー企業ができ始めており、国内のインフラを整備する企業があったり、プログラマーがいたりした背景もあったのだとか。
北欧の銀行がエストニアに進出したことをきっかけに、オンラインバンキングを1996年から始めました。
今仮装通貨で話題のブロックチェーンはBitcoinが世にでる前に作られているらしく、エストニアでは国家のサイバーセキュリティー用で作られたらしいです。
国を守るための施策として、世界の流行よりもかなり前からブロックチェーンを使っていたエストニア、すごいですね。
しかし、エストニア国内ではエストニアの電子化は10年前で止まっていると言われているらしいです。
エストニアの電子化を促進させるためにも、「スタートアップエストニア」というスタートアップのシステムを強化することを目的としたサービスも始まっているようですよ。
データが盗まれることはないのか
デジタル化がこれだけ進んでいると、個人のデータが盗まれることもあるんじゃないかと不安になりますよね。
ただ、ログが全て残るし、デーの書き換えは1秒ごとに審査されているのでデータが盗まれることはほぼありえないとおっしゃっていました。
また、医者は国民のカルテにアクセスする権限があるらしいのですが、不正をしたら医師免許剥奪になるのだとか。
せっかく医者になったのだから、それはリスクが大きすぎてやらないですよね。それでも、過去に数名は告発されたことがあるようです。
エストニアが抱える問題
まず、これからのエストニア国家としての問題は人材不足だとおっしゃっていました。
デジタル化に即し、メンテナンスをする人材が必要なのに、国と民間で給料の差が大きいことが問題らしいです。国の給料が安すぎ、民間企業の半分になることもあるらしく、多くの人が民間企業に流れてしまうのだとか。
年金はほぼないようなものなので、国が守ってくれるという安心感はないですよね。
また、デジタル国家としての問題もあると言います。
世界的に有名なスカイプ(skepe)を生んだエストニアですが、その後スカイプのように成功したところはないのだそうです。
国としてエンジニアレベルが高いわけではなく、もっと必要なプログラミングの部門があるのにないがしろにされているのが問題らしいです。
また、ソフトウェア人材ばかり輩出されてハードウェア人材がいないのもエストニアの問題なのだとか。
良いところは、エストニアの人たちが最初から外にでようと考えていること。そうすることで、他国の現状を見ることができますよね。
エストニアがこれから目指すもの
エストニアとしては、
・EUの中の電子国家リーダーとなりたい
・国をまたいでデータを共有できるようにしたい
・デジタル関連の自由化を進めたい
という3点を目指しているとおっしゃっていました。
フィンランドとエストニアはすでにほとんどのデータが繋がっているらしいです。
これは、データに関する考え方が似ているからできることだと言っていました。確かに、日本が他の国と国民のデータを共有すると言ったら、絶対に恐怖感から反対がおきますよね。
他にも、デンマークとスウェーデンもデータの行き来が行われているらしいです。
データとしては、病院関連のデータなどが主に利用されているらしく、例えばエストニアの人がフィンランドにいるときに病気になったとしても、カルテがフィンランド側でも見れるので便利だということらしいです。
まとめ
今回は、大使館での仕事、エストニアで働いているからこそ感じる日本の問題点、エストニア国家としてのデジタル化、エストニアが抱える問題点や今後の展望など、エストニア大使館で実際に働いているからこそ感じるお話をまとめました。
私自身初めて聞く内容ばかりで、さらに聞けば聞くほど驚きの多い話でとても面白かったです。
この記事で書ききれなかった、エストニア人の人柄や大学制度、エストニアと関係性の深いロシアやフィンランドの関係性などはこちらにまとめています。