最近電子国家として話題のエストニア。
バルト三国の一国であるエストニアは、ロシアの支配下に置かれた過去を持ち、隣国のフィンランドと深い関係性を築いている国です。
そんなエストニアについて、エストニア大使館で働く日本人の方にお話を伺う機会がありました。
エストニア人の人柄、ロシアやフィンランドとの関係性、電子国家ならではのエストニア在住大学生の価値観まで幅広くまとめます。
エストニア人の人柄
エストニアに行く前から、エストニア人はシャイだということは知識として持っていましたが、実際に行ってみて、確かにシャイな人が多いと感じました。
有名なエストニアのことわざで、「普通のエストニア人は地面を見ながら話して、社交的なエストニア人は人の靴を見ながら話をする」ということわざがあるそうです。
また、エストニア人は人見知りでお酒を飲まないとうまく話せないので、重要な会議の際に偉い方たちがサウナに集まって、お酒を飲みながら重要な決定がされたという話があるそうです。これが本当だったら日本では考えられないような面白い話ですよね。
とにかく、ことわざや有名なエピソードがあるくらい、エストニア人はシャイな性格だと言われています。
実際にエストニアに数日間いて、確かにエストニア人はなかなか心を開いてくれない性格なんだろうな、ということは感じました。買い物中やレストランでエストニア人に接する機会がありましたが、みなさん少し恥ずかしそう?というかそっけないような態度の印象でした。
ただ、仲の良い友人や家族といる時はとても楽しそうにしている様子を見て、純粋にシャイな性格なんだろうな、と感じました。
また、エストニア生まれエストニア育ちの人はエストニアをつまらないと感じ、外の国に出て行く人も多いのだとか。新しいものが好きな性格のようです。
余談ですが、エストニアにはエストニア人の女性とロシア人の女性がいるわけですが、服装や雰囲気ですぐにわかると言っていました。
ロシア系の女性は自分をお姫様のように扱ってもらいたいという気持ちが現れているらしく、遊びに行くにも家まで迎えにきてだとかいろいろと文句が多いようです。笑
そんなこともエストニアに住んでいるとわかるようになるのだな、と面白半分で聞いていました。
エストニアとロシアの関係性
私がエストニアに行った際、たまたま宿泊していた場所がロシア人の人たちが住む地域でした。それをエストニア在住の人に伝えると、「あそこは危ないからやめておきな!」と言われ、驚きました。
実際に行ってみて初めてわかりましたが、エストニアに住むロシア人とエストニア人は、住む場所も別、学校も別なんです。
1991年、ソ連から独立したエストニアですが、エストニア国内の国民130万人に対し、ロシア系が約4割を占めています。それも、ロシア系の中でも首都タリンに4割の人がすんでいるのだとか。
エストニア国内にロシア人はもともと1〜2%しかおらず、ドイツ人が10%以上いた時期もあったそうです。
しかしエストニアを支配下にいれたいロシアは、ロシア人をたくさんエストニアに移住させて、エストニアの文化を壊そうとした政策をとりました。
移住したロシア人はロシアに帰る選択肢もありましたが、ロシアよりもヨーロッパの雰囲気に近いエストニアが住みやすいということで、エストニアに残ったらしいのです。
エストニアに住むロシア人は大きく分けてロシア系エストニア国籍の人と、ロシア系ロシア国籍の人と、もう1つ、無国籍の人がいるそうです。
エストニア国籍を持っているとロシアに入国する際にビザを発行しなければいけないため、あえて無国籍にしている人がいるのだとか。
この無国籍という人たちは、灰色のパスポートのようなものを保持しているそうです。
無国籍なんて日本では聞いたことがなかったので驚きました。
また、エストニア政府はエストニア語を話せないとエストニアの国籍取らせないという政策を実施して、ロシア系がエストニア国籍を持つことを拒んでいるようです。
このような政策をしていてよくEUに入れたと思う、とおっしゃっていました。
ちなみに今政権握ってるのは、ロシア系と仲のいい政党らしいのですが、無戸籍の人にエストニア国籍あげようとすると、国民からの反発がものすごいらしいです。
こんな政策が行われていることも、ロシアとの間にものすごい確執があることも知らなかったのでただただ驚きでした。
ソ連から支配されていた歴史を持っているからこそ、なかなか人に心を開かないシャイな国民性になったのではないか、ともおっしゃっていました。
国家間の問題は、国民性を形成したり、なかなか消えない深い傷になりますね。
エストニアとフィンランドの関係性
エストニアからフェリーで一時間ほどで行くことができ、国民のデータも繋がっているほど深い関わりのある隣国フィンランドとの関係性についても伺いました。
フィンランドとエストニア間は、年間で何百万人もの人たちが行き来をするらしく、昔はフィンランドに移住してしまう人が多かったらしいのですが、今はエストニアの給料水準も上がってエストニアに帰ってくる人も多いそうです。
フィンランドの企業でエストニアに直接投資している企業は全体の25%を締め占め、貿易相手としても10数%を占めている関係性。
すごく強いつながりを持っているということがわかります。
エストニアとフィンランドの友好関係の話で、エストニアが開発した技術(エクスロード)をフィンランドに1ユーロでプレゼントしたという話があるようです。
1ユーロで売るくらいならタダでプレゼントしたら良いのに!と思いましたが、タダであげるのはEUの規則で禁止されているそう。
エストニアは優しい国だなあと思ったのですが、実はこれにはエストニアにも利益があることだからフィンランドと技術を共有したらしいです。政治の話も絡んでくると、本当に普段は聞かないような話なので面白かったです。
また、エストニアの技術はフィンランドだけではなく、アゼルバイジャンやアフリカのどこかの国が導入しています。
ただ、そのシステムを入れたからといってその国が必ずしもうまくいくわけではないですよね。
エストニアが電子国家となった理由はこちらから。
https://mona-log.com/about-estonia/
技術があればステータスに価値はない?
私は今大学4年生なわけですが、国が違うと同じ大学生でも考え方が全く違うのだということを感じました。
エストニアではプログラミングを習得していたら大学を卒業しなくても簡単に職が見つけられる場合が多く、大学を容易にやめてしまう人が多いらしいのです。
教育省が一度調査をして、税金の情報と大学を中退したかしていないか、IT部門で差があるかどうか調査をしたところ、大学を卒業するメリットがさほどないという結果になったとのこと。
日本だと、良い大学を出たら良い会社に就職できるという考えが未だに根付いていますが、エストニアではもうそんな考えは一切ないのだということに驚きました。
技術さえあればステータスはなくてもいい、大学の学部くらいは終わらせるという雰囲気があるようです。
働きながら勉強してもいい雰囲気で、政府からの補助金もあるらしいので、大学を中退してしまっても問題ない環境なのかもしれないですね。
これは、大使館の方から聞いた話から感じただけではなく、フィンランドに住んでいる人に話を聞いたときにも感じました。
ステータスなどは全く関係なく、好きなことを好きなようにして生きている人が立派だと思われるという文化があるようで、これを聞いて、北欧に幸福度が高い国が多い理由が少しわかったような気がしました。
まとめ
いかがでしたか。エストニア人の人柄や、隣国ロシアやフィンランドとの関係性など、ただ旅行をしているだけではわからないことをたくさん知ることができました。
エストニアを訪れる際は、国に対する理解を深めてから訪れると旅行も一段と楽しく、実りのあるものになるはずです。
違う国の歴史、現在、未来、価値観や文化に触れることが旅の一番の醍醐味ですね。たくさんのお話をしてくださった大使館の方に感謝です。